いつものこと。

流れていく毎日を、忘れないように書き留めて。

母性の罠とジャー男

あっという間に「平成」最後の12月。

結婚してからは12月なんて聞いたら、あー実家に帰るかとか、年始はどう過ごそう、なんて現実的な問題が先に思い浮かぶ。

つい何年か前までは12月に入る前からソワソワして、「クリスマス」とか「プレゼント」とか、「可愛い下着」とか、そんなワードを自分の中で活性化させていた気がする。いわゆるウキウキするという状態。今でも無いわけではないけれど。笑

 

恋人がいたら、少なからずウキウキするのは当たり前だろう。だって、恋しい人なのだから。そんな人がいたら、なんだか身体がホッとして、あったかくなって、なんでもできる気がして、どうも下心なことも考えてしまって、そんな自分に嫌悪して、、っていう繰り返しが楽しくてしょーがない。←自分ではそう思っていないのだけど。ちょっとダメな彼氏でも、全部が愛おしく思えて、可愛く見えてきて、どうにかしてあげようと一生懸命になってしまう。それが世に言う「母性」というもの。

 

母性とは、、

kotobank.jp

 

私の手元にある新明解国語辞典で調べてみると、

 女性が、自分の生んだ子を守り育てようとする、母親としての本能的性質

ググッてで一番に出てくるのは、

 女性特有の、いかにも母らしい性質。女性に備わっている、子供を生み育てる資質。

だそうだ。

 

私は、その「母性」とやらを、当時付き合っていた彼(炊飯ジャー男と命名)に大発揮していた。

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「今日も行こうか?」

今にも雪が降りそうな空を眺めて、ガラケを耳に言った。

「もう雪降りそうだから、早めに行くなら行っときたいんだけど、、。」

「・・・ん〜、。」

「ねー、どーするの。行った方がいいの?、、もーじゃぁ、行くよ?」

「・・、ん〜、・・はーい。」

時計はもうすぐ翌日の1分をさすところだった。

外からは車が水上を走る音が、1台、また1台と聞こえていた。北陸では道路の真ん中に融雪機があって、冬に入ると道路は川のようにびしゃびしゃだ。

私は、ザッとカバンに泊まる用意と翌日の学校の準備をまとめて、適当な厚手のジャンバーを羽織って出かけた。軽く化粧をして。

ピンポーン。

2年経っても合鍵を持たされていない私は、インターホンを押した。

適当な顔をした彼が出て来て、半分もう後ろを向きながら、ドアを開けた。

「じゃぁ、テキトーにやるね。レポート大丈夫?」

「うん〜、、。」

私は、靴だらけの玄関を抜け、流しに溜まった緑色のドロッとした皿たちを横目に、彼の部屋へ荷物を下ろした。ジャンバーを脱ぐと、石けんの香りがした。シャワーを浴びてきたばかりだった。

そして玄関の方へ戻り、また緑色のドロッとした皿たちの前に立った。

(いつから、置いてたんだよ、これ、、)

左横の冷蔵庫の上には異臭を放つ炊飯ジャーがあった。

 

◆ジャー男という男 〜ある雪の日 1〜

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 私は2年近くもの間、彼のド汚い部屋を掃除していた。会いたいのかどうなのか分からない歯切れの悪い電話に、夜中の呼びつけ、部屋には何週間も洗っていない洗い物、そして、炊飯ジャー

 

彼には私が必要なんだと思い込んでいた2年間。友人との約束よりも、彼の部屋の掃除を優先していた頃の自分は「私は母性が強いんだな」と思っていた。母性とお世話は違う。間違えちゃいけない。母性はとても尊いものだと思うけど、「母性が強いよね〜」で、自分の変態的な恋愛体質を肯定しようとしてはいけない。自分の時間は、自分のためのものだ!

 

女性にとって、ウキウキすることは大事なことだと思うのだ。最近は、主婦モドキなこともあり、1日も家から出ない日もあったりする。でも、朝から化粧をしたりする。自分への気合いを入れる為だったり、今日の自分は可愛くいたいと思う時に。

 

それがひいては、旦那さんがウキウキすることに繋がれば一石二鳥だ!

 

ジャー男に学んだことは多々あるが、今日はその1として、初めて短編集風に書いてみた。ではまた。

 

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